痔は早めに受診することで
負担の少ない治療が
できます
痔は肛門に症状が起こる疾患の中で一番よく見られるものですが、出血や粘液便を伴う場合は大腸がんや大腸炎も否定できないため、症状が現れている場合はなるべく早めに専門医に相談しましょう。そうすることで、重大な病気の早期発見・早期治療や日常生活に影響が少ない形で治療を受けることが可能です。肛門の診察は羞恥心から抵抗があるかもしれませんが、きちんとした診断をして、適切な治療を行うことにより快適な生活を過ごすことが可能です。
肛門疾患の治療・手術
痔のタイプ
痔は、「外痔核・内痔核(いぼ痔)」、「裂肛(切れ痔)」、「痔瘻(痔ろう)」の3種類に大別されます。
内痔核(いぼ痔)
最も起こりやすいタイプの痔です。日頃の生活習慣によって肛門に負担がかかり、血管や結合織からなる柔らかい組織(肛門クッション)が肥大化し出血や脱出などの症状を来すようになったものです。肥大化は、便秘や下痢、香辛料などの刺激物の摂り過ぎ、排便時のいきみ、冷え、過度な飲酒などによって起こります。粘膜にできる内痔核は、痛みが起こることは少ないですが、脱肛(痔核が外に突出する)や排便時の出血が生じます。当院では、患者様の病状に応じて適切な治療を提案します。ほとんどの痔核は外用薬や内服薬で症状は軽減しますが、内科的な治療で解消しない場合や痔核の状態によっては手術を行うこともあります。患者様の痔核の状態や症状を正しく見極め、ジオン注射や切除手術など適切な治療を実施します。
外痔核
外痔核は歯状線という直腸と肛門の境目より外側の皮下組織が腫れたり、血栓(血のかたまり)ができて起こります。アルコールの摂取や肛門が冷えて血流が悪くなると起きやすく、腫れの程度により強い痛みが起こることも多いですが、投薬により痛みは早期に軽減します。なお、大きくなり破裂すると出血することがあります。繰り返す場合は、生活習慣の見直しが必要です。通常、内服薬や外用薬で治ります。
裂肛(切れ痔)
裂肛は、物理的な刺激が加わり肛門の皮膚が切れたり裂けたりする状態です。よくある原因は、便秘になっている時に硬くて太い便を強くいきんで排便することですが、頻回の下痢で肛門に負担がかかる事によって起こることもあります。
急性裂肛
硬便や激しい下痢により、肛門上皮に負担がかかることによりできる浅い裂創(切り傷)です。切れることにより痛みを伴いますが、通常は便通のコントロールや外用薬により治ります。
慢性裂肛
急性裂肛の治癒が遷延したり、再発を繰り返すと線維化(固くなる)を来し慢性化します。痛みを伴い副次的に潰瘍や肛門ポリープ、皮垂を形成します。外用薬や便通コントロールにて様子を見ることも多いですが、慢性化すると繰り返しやすく、肛門の狭窄を伴ったり、痛みの度合いが強かったり、肛門ポリープが脱出してきて症状が出てくる場合には手術の適応となります。
痔瘻(痔ろう)
肛門と直腸の境目の歯状線には肛門陰窩と呼ばれる小さな分泌腺があり、そこに便が侵入して感染が起こり、炎症によって化膿したのが、肛門周囲膿瘍です。肛門周囲膿瘍が瘻孔化(膿を排出してトンネルを形成する)することで痔ろうになります。便が緩い方に多いと言われています。軟便や下痢便が侵入し、疲れなどで免疫力が低下していたりすると細菌の感染力が勝り、感染が成立します。そして徐々に細菌が増えて、膿のたまりを作ったものを肛門周囲膿瘍と称します。ヒトは生体防御反応で膿を体外に排出しようとするので、組織の疎な部位を通り排膿します。この膿の通り道が炎症を繰り返し瘻孔化(トンネル状になったもの)したものが痔瘻です。一度痔瘻が形成されると自然治癒することは少なく、普段は症状はありませんが、免疫力が落ちた時など再度感染し、肛門周囲膿瘍を繰り返し痛みを生じたりします。根治治療には手術が必要となります。まれでありますが、痔ろうからがんが発生することがあります。とくに痔瘻の穴から粘液状の分泌物がある場合は要注意です。また、多発する痔ろうとクローン病との関係性も指摘されています。症状があれば放っておかず、なるべく早めに当院へご相談ください。
当院の肛門診療について
肛門の症状は、痛みが起こっている場所を触られる恐怖心や羞恥心があり、また処置や検査の内容が分からないことから、なかなか受診できずにいるという方も少なくないと思います。当院の肛門診療では、日本大腸肛門病学会専門医が的確な診断を下し、病状に沿った治療を行っていきます痛みが生じる恐れがある場合は、前もって麻酔のゼリーを使って、痛みや違和感がなるべく起こらないように努めます。
診療の流れ
1準備
診察室にご案内します。女性看護師が介助しますのでご安心ください。診察台に横向きで寝て頂き、膝を少し曲げ、お尻が見える位置まで下着の後ろ側を下げていただきます。腰に大きめのバスタオルをかけて準備は終了です。
2診察
手袋を着用して麻酔ゼリーを付けた人差し指を肛門に入れ、腫れている場所や痛みが生じている場所、しこり、ポリープ、傷などがないかチェックします。
肛門が狭い方には小指を入れることもあります。器具を使う場合は、器具にも麻酔ゼリーを付けますので、ご安心ください。
3肛門鏡を使った観察
金属製の筒状の肛門鏡を使って肛門の内側を観察します。肛門鏡は適切に洗浄し、薬剤消毒しておりますので、安心して頂ければと思います。
4診察終了
診察終了後は、残った麻酔ゼリーが下着に付かないように丁寧に拭き取ります。
5処置
出血や痛みなどの症状が起こっている場合は、注入軟膏などの処置により症状を緩和させます。
6身支度
医師が退席している間に、身支度を済ませて頂きます。
7ご説明
医師が診察結果をカルテに記入しながら、病状や今後の治療法について丁寧に説明いたします。分からないことがあれば、ちょっとしたことでも遠慮なくご質問ください。
緊張によって肛門の筋肉が固く閉じてしまい、診察に影響が出ることがあります。落ち着いた状態で診察を受けることが負担の少ない診察において一番重要な点です。
なお、初めて検査を受ける方はどうしても力んでしまうものなので、落ち着いて深呼吸をしてお尻や肩から力を抜くことを心がけてください。実際に検査を受けてみると、痛みや違和感が生じないため、自然にリラックスできると思います。医師と女性看護師が連携して、安心安全な検査を行います。
肛門科の診療をより負担が少ない形で受けるには
緊張によって肛門の筋肉が固く閉じてしまい、診察に影響が出ることがあります。落ち着いた状態で診察を受けることが負担の少ない診察において一番重要な点です。
なお、初めて検査を受ける方はどうしても力んでしまうものなので、落ち着いて深呼吸をしてお尻や肩から力を抜くことを心がけてください。実際に検査を受けてみると、痛みや違和感が生じないため、自然にリラックスできると思います。医師と女性看護師が連携して、安心安全な検査を行います。